ホシノマチオフィス「そらとくらす」を開設:服部さんインタビュー

こんにちは!運営スタッフのマチューです!
ホシノマチ団地は佐久市臼田にある移住者専用の団地です。
運営スタッフの1人として、住民の活動サポートなどを行っています!

ホシノマチ団地には「地域交流施設 『ホシノマチオフィス shoku _ba』」というシェアオフィス・コワーキングスペースがあります。

普段はとホシノマチ団地の住民の皆さんや私たち運営スタッフ、そして、ドロップイン利用のお客さんの仕事場として利用されています。そのほか、夕方や休日には子供達の遊び場になったり、懇親会パーティーなどの会場として使われています。

面白い使われ方もしていて、塾の教室会場としての利用もあるのです。

塾「そらとくらす」を開かれている服部秀子さんにお話を伺いました。

服部さんは公立学校での勤務の後、オランダで発展したイエナプラン教育を日本で初めて取り入れた大日向小学校の教師を経験。退職された現在ではイエナプラン教育を参考にした塾を開き、子供たちをサポートしています。

(「そらとくらす」の内容についてはこちらから)

ここからは服部さんへのインタビュー形式でご紹介をしていきます。

☆塾『そらとくらす』とは?☆

大  谷:「ホシノマチオフィス shoku_ba」でされている塾について伺わせてください。

服部さん:「そらとくらす」という塾をひらき、通う子供たちのやりたいことや困っていることのお手伝いしています。
また、それぞれの保護者の皆さんに対して育児で困っていたり、悩んでいたり、迷っていたりすることの相談を受けています。保護者だからこそできない、第三者だからこそ子供にできることや言えることを代わりにやっています。

子供に対しては(教師というよりは)コンサルタント的なことをしているなと思います。
子供の世界では勉強の割合が多いです。だから自然と勉強をすることを選ぶ子がいるだけで、(それでも子供の世界では)勉強だけと限らないのでそうじゃないことをする子供もいます。

保護者に対しては、育児そのものをアウトソーシング、外注してもらっているという感覚でしています。

大  谷:子育て相談もしているのですね。

服部さん:ホシノマチ団地以外では家庭教師もしていて、そこではお子さんの授業の後で保護者の方の相談を聞いたりしています。家族が元気だと子供にも良い影響があり好循環が生まれるので、保護者の方とお話をすることも大切なことと考えています。

☆塾『そらとくらす』設立の背景☆

大  谷:「そらとくらす」を始められるきっかけを教えていただけないでしょうか?

服部さん:私は公立校と私立校の両方を経験しています。公立校は、みんなが同じことをする授業(一斉授業)が悪いというわけではないですが、それだけに偏りすぎています。
目的化された手段、例えば宿題ですが、本来であれば目的があって宿題があります。しかし、現状では本来の目的を忘れて宿題がやることが目的化されてしまっていることが多いです。

マニュアル化されてしまった分、中身がなくなってしまっています。

教育現場の多忙化もあります。
とにかく子供も先生もとても忙しいという、学校の中にすごく人間的ではないものが増えすぎています。学校というのは「生きる力」を学ぶ場所になっていないなというのが私の見解です。それを表すかのように、学校に合わない子たち、不登校児童が年々増えています。

かたや新しい学校、新しい教育理念、海外の教育手法を取り入れた学校はどうかというと、「学校」を名乗るためには国の認可を取らなければなりません。
認可を取れば文科省の「学習指導要領」の縛りが入ってきます。どれだけ高い理念を掲げても「学習指導要領」から抜け出せないのが現状です。

「学習指導要領」によってやらなければならない学習内容もありますし、教師1人に対する子供の人数も決められています。お金もかかるので何人も教員を増やせず、理念・理想と現実の矛盾がどうしても生まれてしまっているというのが私の考えです。

これが学校という場所の限界と私は感じました。

誰が悪いというわけではなく、システム的に無理があると私は捉えます。
もちろん公立でも私立でも楽しく過ごしている子どもたちもいます。そこで熱意を持って未来をつくろうと頑張っている先生たちもいらっしゃることも知っています。
リスペクトしていますが、私が教育でやろうとしていることは学校では無理だということに結果として気が付きました。

今の社会はあまりにも学校に依存しすぎています。
学校で(教育の)全てのことがされる。逆に言えば、家庭や地域から教育の場が奪われていたりする部分があります。

それだからこそ、学校に頼らなくても大丈夫な社会を作る。教育の役割を地域や個人に戻していこうと思って選んだのが、私塾でした。


昔でいう寺子屋をイメージしています。地域にちょっと教育に詳しい人のところに通える場所を作ろうと思ったのが「そらとくらす」です。

☆塾『そらとくらす』をホシノマチ団地で開いた理由☆

大  谷:ホシノマチ団地で「そらとくらす」を開かれたきっかけはどういったものだったのでしょうか?

服部さん:始める前に「そらとくらす」を開く会場を探していて、いろんな人が候補の場所を紹介していただきました。その中に、ホシノマチ団地の住民でかつ運営スタッフをしていた町田さんが「ホシノマチオフィスshoku_ba」を教えてくれたのがきっかけです。
他にも空き家や店舗の使われていないフロア、シェアスペースなどありましたが、一番ここがあっていました。

大  谷:どんなところで決められたのでしょうか?

服部さん:雰囲気が明るく、ちょうど学校にある教室と同じぐらいの広さで、印刷機とWi-Fiの設備も整っていたということがあります。

大  谷:ネックな点はなかったでしょうか?

服部さん:理想では教室になる会場の隣に、お子さんを送り迎えする保護者の方の駐車場があることを描いていました。お子さんが教室を出入りする際に、駐車場で保護者の方とお話しする時間があるとよかったからです。
ホシノマチ団地は駐車場が少し遠いところにあるので、それだけがネックでした。

     

その当時はホシノマチ団地の住民の皆さんが定期的に集まる会議があって、そこでプレゼンをさせていただいたところ 塾の開設に協力しますよといっていただけたことで、ここで塾を開くことに決めました。

大  谷:今はどのぐらいの頻度で教室をされているのですか?

服部さん:当初は週2だったのですが、今は週4日で開塾しています。
月曜日と木曜日に少人数の子が一緒に学ぶクラスをしているほかは、マンツーマンでサポートをする個別授業もしています。今は個別授業を申し込むお子さんが多くなって週4日、ホシノマチ団地を使っています。

☆ホシノマチ団地で地域の教育を実践☆

大  谷;塾の教室というと、普通は先生と塾生しかいない空間です。ところが、ホシノマチ団地は、団地の住民の方が仕事をしていたり、私たちスタッフが打ち合わせをしていたり、はたまた、団地の子供が遊んでいるような場所ですが、その中で塾をされていますね。

服部さん:それもホシノマチ団地を決める時の懸念でした。塾という空間の中に他の人
がいるということもそうでしたし、逆に申し訳ない気持ちもありました。

大  谷:申し訳ない気持ちですか?

服部さん:仕事もしている住民の人がいる中で、私と子供との会話がお邪魔にならないか心配をしていました。
そのことを何度もホシノマチ団地スタッフの牧原さんに確認したのですが、
「いいですよ、いいですよ」
と快く言っていただきました。

塾を開いてからは頻繁に使っていた住民の方とも仲良くなれました。
機会あるごとに住民の方々が子供の相手をしてくれたことや、エンジニアだった方がプログラミングを教えてくれたこと、子供がパソコンの充電器を忘れてしまった時に貸してくれたことなどがあり、そういうやりとりをしていくうちに(申し訳ないという気持ちは)解消していきました。

結果としてみれば、「そらとくらす」に通う子供がいろんな大人と関われる場にもなっていますし、「そらとくらす」の特徴として、子供たちは勉強だけをしにくるわけではないので他の人たちがいるというのがすごく良かったです。

大  谷:地域に教育をもどすということの舞台にホシノマチ団地がなっているのですね。

服部さん:はい。もっとここに通う子供が増えてほしいと思いますし、大人が仕事をしている風景を子供たちが目にすることは普段ありません。構っていただかなくても、そこにいていただけるだけで子供たちにとって良い刺激となっています。

大  谷:確かに、一般では日常生活で子供が家族以外の大人を見る機会は学校のほかにはあまりないですからね。

服部さん:それもあってここの空間全体が教材となっています。
ただ、それでご迷惑をおかけしていないかと…。

大  谷;いえいえ、お子さんたちに声をかけていただいて嬉しいですし、常駐スタッフはここにいることが仕事ですので(笑)

服部さん:確かにそうですね!

話が戻るのですが、通う子供の1人が、電気で動作する錠を作りたいと言って、相談していたことありました。2人だけでその鍵の名前もわからなかったところで牧原さんに聞いたら、W E Bで調べてもらいました。それだけでなく、ちょうど訪ねてきた牧原さんの奥さんも一緒に考えてくれて、知っている知識を教えてくれるのもありがたく、たわいのない会話で自分の取り組みが広がる経験ができたことは子供にとっても良い刺激となりました。
その後は電子錠の制作やプログラミングができる住民の方に先生になって頂こうとしたりもしました。
「そらとくらす」では子供のやりたいことをサポートしていくため自分の人脈をフルに活用するのが頻繁にあります。

大  谷:コワーキングスペース=ビジネスの場所と、世間一般での認識ですが、教育のところでもうまく機能していてよかったです。

服部さん:今は少ない人数の子供たちのために広く使わせていただいてしまっていますが…。

大  谷:いえいえ。私は生徒さんたちが来られるのは楽しいです。
仕事で煮詰まっているときや気分転換になったり、子供の発想を聞いて「そういう見方があるか」と学んだり、貴重な環境で仕事をさせてもらっています(笑)

(「ホシノマチオフィス shoku_ba」についてはこちらから)