「教育移住=私立小学校」なのか? 公立小学校を選択し移住した子育て世代の“在宅勤務×地方公立小学校”の暮らしとは?

「長野県は教育県」と呼ばれるように、ここ佐久地域においても特徴的な教育を行う学校が多数あります。

近年では私立小学校が次々と開校され、進学を機に移住をする子育て世代の増加が顕著です。

その中でも公立小学校を選択し、ホシノマチ団地に移住した家族にインタビューを行いました。

きっかけは「夫の在宅勤務」と「子どもの進学」

もともと夫は都内の企業に勤めておりました。ところがコロナ禍で在宅勤務がスタート。

最初は戸惑いもありましたが、1年が経つころには完全にリモート勤務が定着し、会社としても今後も在宅中心で業務を行っていく方針だと明言されたのです。

その頃から「今住んでいる場所に残る必要はあるのかな?」という思いが芽生え始めました。

通勤頻度が減るのなら、もっと広くて自然が近い場所で暮らしたい。特に、当時小学校入学を控えていた子どもがおり、「移住」という選択肢がより現実味を帯びてきたんです。

私たちはアウトドアが好きで、冬はスノーボード、夏はキャンプや登山を楽しんでいます。そんなライフスタイルにぴったりなのが長野県でした。

その中でも、都内へのアクセスの良さも含めて、佐久市が候補として浮上しました。

移住前の準備と物件探し

本格的に移住を検討し始めたのは、移住の1年ほど前でした。以前の住まいは持ち家だったため、売却の見通しが立たないうちは動けず、一旦計画を保留していました。

ただ、「いつ売れてもいいように」と、佐久市の不動産情報は調べ始めていて、問い合わせやエリアの情報収集は進めていました。

実際に家の売却が進んだタイミングで、佐久市に2泊3日で訪問しました。

現地では不動産会社を回りながら内見を行い、同時に市の移住支援制度も活用。

移住検討者向けに交通費や宿泊費の一部を補助してくれる制度があり、費用面の負担を抑えられたのはありがたかったです。

物件を選ぶうえで意識したのは

・夫の在宅勤務に適しているか。特に防音性。

・自然環境や景色、生活圏内に必要なものがあるかなどの周辺環境

・子どもが通う学校はどんなところなのか

といったところです。

東京へのアクセスを考えると佐久平駅周辺が一番便利かもしれません。ですが私たちは、駅周辺の開発された景色よりも、そこから離れた、より自然を感じるエリアにすることにしました。

一軒家が理想的でしたが、時期的に空き物件が少なく、集合住宅も視野に入れて探しました。

最終的に、ちょうど空きの出たホシノマチ団地に決定。広さや間取り、学区の雰囲気も含めてバランスがよく、今の暮らしにフィットしています。

学校選びの視点と都会の“マンモス校”事情

私立小学校の進学も視野に入れていましたが、引っ越せるタイミングと受験スケジュールが合わなかったり、色々と調べて考えたりする内に、やっぱり公立がいいかなと思いました。

以前住んでいた場所では、1学年に7〜8クラスあるようなマンモス校に通っていました。子どもはサッカーの習い事もしていたため、友達がたくさん出来たのはとても良かった半面、生徒数の多さから先生の目も届きにくいと感じる場面もありました。一長一短といったところですね。

移住すると友達と離れることになるため、寂しがる場面もありました。ですが長期休みの日に帰省して遊ぶことができるため、それはそれで楽しく過ごすことができています。

私たちの場合、教育移住でよくあるような「学校を決めてから住む場所を調べる」というよりは、先に住む場所をある程度決めてから学校を調べました。

先ほども言いましたが、東京へのアクセスを考えると佐久平駅周辺が一番便利かもしれません。ですが私たちにとっては「街並みが整いすぎている」「以前住んでいた場所と景色があまり変わらない」といった印象を受けました。

あとは学区内にある小学校は年々生徒数が増え、マンモス校化しているといった状況もあり、もう少し離れた、自然を感じられるエリアに絞り、学校を調べました。

最初に市役所に問い合わせをしたところ、各学校に聞いてくださいとのことでした。

そこで各学校に「移住するんですけど、ちょっと様子を見させてもらってもいいですか」と言ったら「全然いいですよ、来てください」と快く仰ってくださり、実際に見学をさせていただきました。

色々な学校がある中、通うと決めた学校は1学年2〜3クラスと適度な規模感。子ども一人ひとりに目が届きやすく、先生との距離も近いと感じています。統合し、新しくできたばかりの学校だったので、子どもも馴染みやすいかなと思い選びました。

以前の学校は集団登校でしたが、こちらの学校は年度初めの限られた期間のみ集団登校で、基本は個別に登校することがほとんどです。ですが、登下校時には主要な道に「見守り隊」の方々が立ってくれますので、安心して見送ることができます。移住してすぐに近所に友達も出来て、朝は友達とよく登校しています。

ほかに驚いたことの一つに「マラソン大会」があります。マラソン大会というと、決まった距離を走るのが普通かと思いますが、通っている学校では「どこまで走るか、自分で目標を決めてゴールを目指す」といったものでした。ゴールしたあとも、まだ走れそうだったらさらに距離を伸ばしてよいなど、柔軟さもあります。

私立の学校でよく聞くような、「画一的ではない、生徒一人一人の自主性を大事にする風土」を感じ、教育の現場は、常に時代に即して変化していると思いました。

他にもあるかもしれませんが、まだ通い始めて1年経っていないので、この先が楽しみです。

実際に移住してみて感じたこと

生活環境が変わったことで、まず実感したのは「ストレスの減少」です。以前住んでいた場所では、常に人の多さに気を使っていた気がします。電車も混んでいるし、買い物も行列。近所の公園ですら、遊具が混んでいて思うように遊べないこともありました。

今は、近くに広い公園があり、思い立ったらすぐ自然に触れられる環境です。車で20分~30分走ればスキー場にも行けますし、四季を感じながらの生活ができるのは、大きな魅力だと感じています。

夫の在宅勤務も、問題なくできております。東京に行くこともありますが、新幹線を使うので、地図で見るほどの距離は感じません。佐久市の暮らしがフィットしているのか、「東京に行きたくない」「早く帰りたい」と言うこともあります。(笑)

夫は花粉症だったんですが、佐久に来てからは治まったみたいで。空気の良さも要因の一つかもしれませんね。

地域の方との距離感も心地よく、挨拶やちょっとした立ち話があるだけで、見守られている安心感があります。お互い干渉しすぎないけれど、困ったときは助け合えるような関係性が築けていると感じます。

移住を考えている人へのアドバイス

私たちが移住して感じたのは、「下調べと現地訪問の重要性」です。ネットの情報だけでは分からないことがたくさんあります。地域によって子育て支援の手厚さや教育方針、町内会の雰囲気などは大きく異なります。できれば季節を変えて何度か訪れてみると、その土地の空気感がよりリアルに感じられると思います。

また、理想を追い求めすぎず、「今の自分たちの生活にフィットするか」を基準に考えると、スムーズに選択できるかもしれません。私たちも、当初は一軒家にこだわっていましたが、実際に暮らしてみると、団地でも快適に暮らせています。

地方移住は人生の大きな転機ですが、思い切って一歩踏み出すことで、新しい可能性が広がります。「合わなかったら戻る」という選択肢もあるので、あまり気負いすぎず、まずは一歩踏み出してみてほしいです。

まとめ

佐久市への移住は、私たち家族にとって大きな決断でしたが、結果的に本当に良い選択だったと感じています。自然の中でのびのびと暮らし、子どもが安心して学校に通える環境、そして夫の在宅勤務もより快適になり、家族全体の生活の質が上がったと実感しています。

移住は簡単ではありませんが、自分たちの「こう暮らしたい」を大切にしながら準備を進めていけば、きっと納得のいく移住が実現できると思います。これから地方移住を考える方々の参考になれば幸いです。